不動産売買取引において土地や建物の売却をする場合、隣地と道路などとの境界を明示するのは売主の義務です。
実際に不動産売買での境界トラブルは多いため、不動産売却を考えているのなら事前に境界線の調査が必須です。
ここでは、1.なぜ境界の明示が必要なのか、2.明示義務を怠った場合に想定されるトラブルについて紹介します。
■境界の明示の義務と必要性
境界の明示とは、隣接する土地との境目である隣地境界線をはっきりさせることをいいます。
不動産の売主の責任で、買主に境界を表す境界標、境界杭、ポイントなどを基準として買主に「ここからここまでが今回売買する土地の範囲ですよ」と知らせる義務があります。
売主が勝手な思い込みによる境界ではなく、正確な境界を確定する必要があります。境界を確定するには、当該土地の所有者(売主)と隣地所有者双方の立ち合いのもと、土地家屋調査士や測量士などの有資格者である専門家が測量しなければなりません。
不動産を売却する売主は、確定した境界を紙ベース(『境界確認書』)で買主に明示することで、後々のトラブルを回避することができるのです。
また、正確な境界が第三者にもはっきりしていれば、購入希望者にとって不安要素をなくすことができるので希望価格で売却できる可能性が高まります。
境界明示を購入条件(確定測量渡し)としている購入希望者も多く、「確定測量図」がある、もしくは決済までに「確定測量図」が用意できる土地に絞って探しているケースもあるからです。
逆に境界の明示がない不動産は、信用度が低くなり敬遠されます。
■境界の明示がない場合に想定されるトラブル
土地の境界がはっきりしていないと、建物の新築やブロック塀などをしたときに、無用なトラブルが発生する可能性があります。
【想定されるトラブル】
・隣人や自分が新築する場合、建物の一部が境界を超える可能性がある
・隣人に敷地の一部を勝手に使われる可能性がある
・当該土地を住宅ローンの担保に設定できない可能性がある
・隣地の所有者や代が変わると、境界越境の主張をしてくる可能性がある
買主が上記のようなトラブルを被った際に、売主と不動産会社に損害賠償を請求する可能性もあることから、売主は正確な境界の明示をしましょう。
境界の明示をしない代わりに「現況渡し」で安価に売買するなど、売主買主双方合意の上で売買契約が成立する場合もあります。
ただ、のちのちトラブルになる種を残すことになるため、自分の代できちんと境界を確定してから売却することをおすすめします。